ライちゃんとボク ~犬の仕事~
ライちゃん(高校生)は、ボクのことを怠け者だと思っているらしい。
「ピエル、寝てばっかり。」って言われてる。
言わせてもらいますが、ボクは、仕事をちゃんとやっています。
仕事は、家族を守ること。
捨てられた犬の子供として川沿いの小屋に住んでいた時は、一緒に保護されてたケイタや、モモが、ボクの仲間=家族のようなもんだったけど、今は旦さん達みんなが、ボクの家族だ。
だから、守ってる。
知らない人がきたら、警戒する。
毎朝毎晩、旦さんの散歩にも同行している。
近所のパトロールもついでにやってる。
お客さんには、「こんちには」と挨拶してる。
夜は、みんな寝てるから、聞き耳をたてながら寝るんだ。
「寝てばっかり」とは、聞き捨てならないよ。
犬は、人間よりもレム睡眠の時間が長いんだ。
ボクの目が、ぴくぴく動いてるでしょ。 夢見てるみたいに見えるでしょ。そういう時、ボクはぐっすりは眠ってない。
脳は起きてる。緊急事態に備えてるんだ。
だから、人間より睡眠時間は長く必要なんだ。
それもこれも、家族を守るためなんだ。
わかってほしいよ。
ボクから言わせてもらえば、ライちゃんの方が、よっぽど怠け者だ。
「ちょっと休憩してから勉強しよ!」とか言ってすぐに寝ちゃう。
今週は、テスト週間なのに、大好きなアイドルが歌う曲をイヤホンで聞きながら、机に向かってる。
おなかすいた、とか言って、勉強もせずにポテトチップを食べてる。
《ライちゃん!勉強とは、そんな態度で向き合うものじゃないよ。》
ボクは、再三 こう忠告しているんだけどね。
ボクの言葉は、正確に人間に伝わらないことが多いから、ライちゃんにも 伝わってないみたいだ。
そんなライちゃんだけど、実はボクの恩人なんだ。
この家に犬を連れてこようと言ったのは、ライちゃん。
インターネットの犬の里親募集のサイトに掲載されたボクを、ライちゃんが見つけて、ここに呼んでくれた。
里親と里犬の相性が良いかどうか、お試し期間がある。
ボクは、ケイタやモモやボランティアのおじさんたちと離れてさびしくて震えてた。その時、抱っこして一緒に寝てくれたのは、ライちゃんだ。
「これから 私が毎日、散歩に連れていく。」と誓っていたけど、
それはダメだったみたい。
眠り娘のライちゃんは、朝早く起きたためしがないから。
(毎日、ボクは旦さんと一緒に行っている。)
旦さんの朝の散歩につきあって、(旦さんは、ボクを散歩させてるつもり)
近所のパトロールをした後、ボクはライちゃんを起こしに行く。
学校に遅刻するといけないからね。
恩人の世話は、なかなか大変だ。